書籍の概要
本書「論理的思考とは何か」は、論理的思考の型が一様でないことを指摘する。各国や文化の背景により多様な型が存在し、経済、政治、法技術、社会の4領域に分けて紹介されている。
- 経済領域の型は、論証や説得を目的とし、結論へ一直線に進む形態を取る。これは主にアメリカで活用される。
- 政治領域の型は、さまざまな立場から審議を尽くし、矛盾を解決・統合する形態である。フランスではディセルタシオンとして用いられる。
- 法技術領域の型は、演繹的に神の存在や古いことわざに帰結する価値観に基づく。イランではエンシャーとして活用される。
- 社会領域の型は、道徳的感情の涵養を目的とし、日本では感想文の形式で見られる。
これらの思考法を状況に応じて選択できるようになることで、柔軟な対応が可能となる。
読書後の感想
本書を通じて、世の中のさまざまな仕組みが理解しやすくなった。紹介された思考の型が現実の現象に与えている影響は深く大きいように見える。私が考える、影響の例は下記になる。
従来、私は日本の国語教育を批判的に見ていた。「作者の気持ちを述べよ」などの設問は、曖昧な文章を推奨し、非効率な忖度文化を助長する悪影響があると考えていた。しかし、最近の観察から、教育を受けていない外国人のモラル欠如した言動を目にすると、他人の気持ちに配慮する重要性が浮かび上がる。日本の国語教育は、そうした観点で意味を持ち、豊かで安全な社会を支える側面がある。モラルを学んでいない外国人の受け入れには、慎重な姿勢が必要である。
また、アメリカ人が他者の話を聞かず横暴に振る舞い、失敗を繰り返す理由も明らかになった。結論ありきの経済型論理のみを学んでいるためである。例えば、2003年のイラク侵攻では、イラクの大量破壊兵器保有を大義としたが、公開された「トラック」の写真は虚偽情報に基づく戦争を象徴した。さらに、イノセンス・プロジェクトがDNA鑑定で証明するように、一部の性犯罪者投獄は冤罪であり、結論先行の議論が原因となっている。
このように、本書は論理的思考の型の違いから、さまざまな社会現象を理解・説明する視点を養う。読書を推奨する。
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