会社は誰のものか？

「会社は株主のもの」という主張がまことしやかにされている。が、この主張は原則として誤りとなる。

会社名義の預金口座に入っている現金は、会社のものだ。株主のものではない。会社の資産は会社のもので、株主のものではない。

会社の負債も会社が負っているもので、株主のものではない。資産も負債も会社のものなので、その差額により算出される純資産も会社のものだ。

これら会社のものを経営する権利は、経営者のものだ。株主ではない。株主は経営者を選ぶ権利があるに過ぎない。

会社は株主のものという主張は、解像度が低すぎる。

一方で、確かに会社は株主のものと言える場合も起こり得る。株主の権利には、取締役の選任解任を含む議決権、配当請求権、などがある。十分多くの株を持つ大株主は、都合の良い取締役を送り込み、会社の財産を自由に活用・処分できるようになる。こうなってくると、事実上、会社は株主のものと言って良い。

その大株主の意向により、事業の分割と売却、資産売却、リストラのように、会社側から見て心情的に望ましくないことが行われるかも知れない。だが、これは仕方ない。いらない事業、いらない資産、いらない人材が放出される運命にあるのは、資本主義経済社会に生きる者としての宿命だからだ。