米国を揺るがす中国の影:トランプ政権の対中政策と米ドルの命運

※ロイターの動画のキャプチャ。発言は4月11日のものだが、写っている画像は2019年のもの。

トランプ大統領が自ら火蓋を切った米中間の関税合戦は、中国からの報復措置を招き、結果としてトランプ政権の対中政策に大きな転換をもたらした。ロイターの報道によれば、2025年4月11日、トランプ氏は習近平国家主席に対し「非常に尊敬している」と発言しており、かつての強硬な姿勢から一転、明らかに低姿勢に転じている。

トランプ氏、「友人の習近平主席」との合意に意欲 米中貿易戦争の終結に向け(字幕・11日)
トランプ米大統領は10日、激化している貿易戦争に終止符を打つために、中国と「ディール(取引)」を実現させたいと述べた。

この急激な態度の変化の背景には、中国による報復関税の影響に加え、より本質的な要因が存在するという分析がある。それは、中国が巨額に保有する米国債の売却を示唆したことによる影響だ。2024年末時点で中国は約7590億ドル(約110兆円)の米国債を保有しており、もし中国がこの債券を大量に売却すれば、市場の需給バランスが崩れ、他の投資家も追随する可能性がある。これは、米国の財政赤字問題を深刻化させ、ひいては米ドルの通貨としての信用を揺るがす事態に繋がりかねない。

China cuts holdings of US Treasury bonds to 9 billion in December 2024 - Global Times

そもそも、基軸通貨としての地位により、米ドルは経済の実力以上に高く評価されてきた。この高すぎる米ドルは、米国に購買力をもたらし恩恵を与えた一方で、国内の製造業を国際競争から不利な状況に追い込み、空洞化を招いた。もし今後米ドルが下落すれば、脆弱化した製造業と巨額の財政赤字を抱える米国政府は、国民を十分に支えることができず、国力の低下は避けられないだろう。

現在、米国ではドル安、債券安、株安という「トリプル安」が進行している。これは、米国の経済的な命運が、中国の手によって左右される可能性が現実味を帯びてきた結果と言えるのではないか。トランプ政権の強硬な対中政策は、自らの首を絞める結果となり、米国の経済安全保障における脆弱性を露呈させたと言えるだろう。今後の米中関係の行方は、世界経済の安定にも大きな影響を与えるだけに、注意深く見守る必要がある。

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